「15・社会言語学」で気になった「言語相対論」について、とりあえずググってみた。
「言語はその思考や世界観に影響する」という仮説を、私は至極あっさり納得してしまったんだけど、テキストによればその仮説を「信じている学者は少ない」と。ええええ?そうかなあ?
「名前をつけたらそのものが存在し始める」っていうことは、私にとっては日常的に経験している出来事で。それって「言語が自分の世界観に影響してる」ってことでは? と素朴に思った訳です。
例えば、それまでに意識していなかった物事に名前があることを知ったら、次の瞬間からその物事は私にとって「存在するもの」となる。その物事に対して意識を向けることと名前がつく(あるいは言語で表現される)ということはかなり同時発生的に起きている気がするんです。そういうのとは違うのかなあ?
と、「言語相対論」で検索してみたら、まあ出るわ出るわ、言語学関連の濃厚なWebページが、くらくらするくらいヒットしまして。私はいわゆる「ホームページ」を作る仕事をしていますが、商業的なキレイにデザインされた、仕掛け満載のWebサイトより、がりがりのプレーンテキストでもんのすごい濃厚な内容の学術系Webサイトが、実は個人的には好きでわくわくします。
とはいえ私には言語学的な基礎知識が圧倒的に欠けている訳で、到底歯の立たない感じのところも多く、またこの「歯の立たない」感じが非常に魅力的ではあるんですけども、テキスト学習を進める都合上、まあざっと拾い読みして済ませるほかありません。この手の知的泥沼にハマると、私、かなり帰って来られなくなっちゃうので。
今回私をいったん救ってくれたのがこのWebページ内の記述です。学術的な意味での引用ではないのでちょっと気が引けますが、真面目に感想を述べるための引用として掲載させていただきます。
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大阪大学 言語文化研究科 助教授 山下仁氏のホームページ
http://www2005.lang.osaka-u.ac.jp/~yamasita/
エスノメソドロジー研究会 レジュメ 第15回 99年5月25日 より抜粋
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(3)言語相対論
「言語相対論」という思想の根本的な思想
1. 不可知論的な「言語相対論」。すなわち、言語的な認識は原理的に世界を把握できないと主張する考え方。
2. 翻訳不可能論。すなわち個別言語はそれぞれ固有の世界観をもっているので、言語を越えた理解は不可能であるという考え方。
3. 言語の文化依存性。個別言語の語彙のシステムが生活文化に依存し、言語的な思考が言語の文法構造に影響を受けるという考え方。
第一の考え方は、認識の根本の問題に関わる。この考え方の問題は、言語的範疇化を度外視している点、および命題と推論の構成法である。第二の考え方は、第一のラディカルな不可知論を一段弱めたもの。第三の型の「言語相対論」は一番弱い仮説である。
この考え方は、言語が思考を規定するか、あるいは思考は言語の違いをある程度は反映するのかという問題に関わっている。前者を言語相対論の強い仮説、後者を弱い仮設と称する論者もいる。この種の言語論の特徴は、概念規定も問題設定もあいまいで、理論的検討に絶えないことである。すなわち、ここで「言語、思想、規定、反映」と言われているものが具体的に何をさすのかが不明確で、一般的な議論の余地が存在しない。この種の相対性論議は不毛である。
========================抜粋ここまで
他のサイトでの記述などから、サピア=ウォーフの仮説に代表される言語相対論の考え方には色々な「程度」があるというところまでは理解していました。ここではっきり3つにまとめてあったので非常に理解しやすかったです。
そうか、これって「仮説」なのですよね。
学問的探求においてはそれらを「学問的」に扱う、つまり一つ一つの論理形成において「学問的検証として」問題がないかどうかということが、それが「学問的妥当性」を持っているかどうかの判断基準になる訳だ。
これは数名の言語学者による勉強会のレジュメの抜粋なのですが、まずは、この仮説にはいろいろな段階・程度が設定されていることと、理論的検討に耐えるか否かという観点を改めて示して貰えたところで、いったん納得した感じです。
今回のNAFL受講の動機の一つには、「言語学の広大な地平の一端に触れる(もしその中に興味が湧くものがあったら継続して学ぶ)」というのがあるんですが、そういう香りをびんびん感じていて、個人的には大変わくわくしています。
ブラウジングしていると、検索ワードを起点にいろいろなところへ飛んでいったり、バスケットボールのピボットみたいに隣接する領域にどんどん入り込んでいけるのですが、今日もそんな感じで、なんだか面白そうなサイトをもう一つ見つけました。
それを紹介して、今日はおしまい。
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よりよい英語教育を志向するという趣旨のサイトなのですが、「研究」に関する部分などは、さらりと眺めただけでも面白そうでしっぽが振り切れそうです。少しずつ読んでみたいと思っています。
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英語教育の哲学的探究
http://ha2.seikyou.ne.jp/home/yanase/index.html